アンドリュー・ワイエス展

東京都美術館で開催中の「アンドリュー・ワイエス展」に行ってきました。

先日、奈良県の緑豊かな田舎町を旅しました。古い民家の窓から差し込む光のなか、外の豊かな自然を眺めて過ごす時間がありました。そのときの感覚がまだ心に残っているなかで会場へと向かいました。

ワイエスの絵を間近で見て驚いたのは、その細やかな質感です。一見すると写真のようにリアルに見えますが、近くに寄ってみると、テンペラやドライブラッシュといった独特の絵の具の筆跡、そして光と影が混ざり合うグラデーションが、何と表現したら良いか分からないほどの豊かさで迫ってきます。

本展のテーマでもある「境界」を表す、「窓」や「扉」の絵も数多く登場します。これらはワイエスにとって「生と死」や「自分の心の内側と外の世界」を繋ぐ特別な意味を持つモチーフだったそうです。ひと言に「境界」といっても、それを「異なるものを隔てる仕切り」と捉えるのか、それとも「異なるものを繋ぐ往来」と捉えるのかを感じました。

なかでも最も心に残ったのは、それぞれの絵に生きている「気配」を感じることでした。そこに人がいる気配、動物がいる気配、心地良い風が吹く気配。それは、目の前の対象をただ写実的に描いているわけではなく、そのものが放つ「氣」を感じて表現しているからなのでしょう。その場の雰囲気や温度まで伝わってくることこそ、ワイエスの作品の最大の魅力の一つではないかと思います。

この展覧会は、東京都美術館(東京・上野)で2026年7月5日(日)まで開催されています。平日の朝一番で鑑賞しましたが来場者が多く、週末や会期後半になるとさらに混み合いそうです。東京会場のあとは愛知・大阪へ巡回する予定です。

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