心身統一合氣道の技の稽古で、最も重要なのが「力を抜く」ことです。
しかし、力を抜くことは決して簡単ではありません。自分では力を抜いているつもりでも、実際には入っているからです。
「力み」には、自覚できる力みと、自覚できない力みがあります。
自分で「力が入っているな」と感じられるならば自覚できる力みで、この力みは、全身リラックス運動で誰でも簡単にリセットできます。
問題なのは、自覚のない力みです。
特別なことをしていないのに、夕方になる頃にヘトヘトという時は、身体の様々な場所に無自覚の力みが生じているのかもしれません。
例えば、少し難しい顔をしているだけでも、顔や首には力みが生じています。
この無自覚の力み、どのように対処したら良いのでしょうか。
無自覚の力みは、心と身体の両面から影響を受けて生じています。
まずは「身体の力み」から。
日常の姿勢が不自然だと、バランスが悪い状態になっているため、バランスを保つために不要な力を使い、身体を支えることになります。
すると身体は「力んだ状態」を覚えてしまい、身体の硬さとなります。身体が硬い状態で激しい運動をすると、怪我や故障の原因になります。
この力みは無自覚ですから「力を抜こう」としても限界があるのです。
これを解決するには、まずはバランスの取れた自然な姿勢を確認して、全身において不要な力を使っていない状態を体感する必要があります。
その状態を身体に覚え込ませることで、無自覚の力みが取れるのです。
次に「心の力み」です。
相手が攻撃してくるときに身構えると、心は緊張状態になります。相手を自分の思い通りに動かそうとするときも、そうなります。
「心が身体を動かす」ので、それが身体の力みとして表れるのです。
これは技の稽古に限ったことではなく、日常生活においても同じです。
相手が自分に何かしようとして来たら、心は緊張状態になりますし、自分のことで精一杯になっていて頑ななときも、そうなります。
心の力みを解決するのが、「臍下の一点に心を静める」ことなのです。臍下の一点があるお陰で、物事に力まずに対応できるようになります。
ちなみに、心身統一合氣道の稽古の始めに行う柔軟体操の目的は、技の稽古で必要な「柔軟性のある身体の強さ」を得るためのものです。
身体が硬いということは、技の動作で相手とぶつかるということです。
硬くなっている身体が柔らかくなるとは、筋肉、そして、筋肉と骨をつなげる腱も柔軟性が増し、関節の動きもスムーズになるということです。
柔軟体操を行うときは、二つのことを注意すると良いでしょう。
一つは「余分な力を抜く」こと。それによって、動ける範囲が自然に広がります。「痛い(苦しい)」ところまで行うと、力が入ってしまい逆効果です。
一つは「無理なく動かす」こと。正しい方向に身体を動かすことによって無理が生じません。過度にリズムや勢いをつけて行ってしまうと無理が生じます。
間違えやすいのは、180度近く開脚してペタッと畳につくことと、柔軟性のある強い身体をつくることは、イコールではないことです。
そもそも日常の動作や技の動きでそこまで開脚する機会がありません。ここを誤解して、多くの皆さんが柔軟体操で無理をしています。
技の稽古をするために、柔軟性のある強い身体づくりが不可欠です。稽古をしていない人も、様々な動きにおいて大切なことです。
日頃の柔軟体操を正しくできているか、いちど見直してみませんか。