英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―

サントリー美術館で開催されている「英一蝶 ―風流才子、浮き世を写す―」に行って来ました。

仕事で東京ミッドタウンに行くことになり、その中にあるサントリー美術館のポスターがふと目に留まりました。なんと生き生きとした楽しい人物なのでしょうか。立ち寄ることにしました。

英一蝶(はなぶさ いっちょう・1652~1724)は江戸を中心に活躍した絵師です。狩野宗家に入門し、高い絵画技術と幅広い教養を身に付けます。後に、その確かな技術に基づいて風俗画を描くようになり人気絵師になります。風俗画に登場する人物の描写には、どこかユーモアを感じます。

特筆すべきはその波乱万丈な人生。英一蝶は数え年47歳のときに三宅島へ流罪になり、11年後に恩赦で江戸に戻ります。島流しになる前は「多賀朝湖(たがちょうこ)」、江戸再帰後に「英一蝶」と名乗り、島流しの期間に書かれた作品は「島一蝶(しまいっちょう)」と呼ばれています。

この展覧会は三部構成で、「多賀朝湖時代」「島一蝶時代」「英一蝶時代」と分けて展示されています。環境や境遇による変化を隅々に感じ取ることができて、良い構成だと思いました。

王道のテーマの風景画や花鳥画も素晴らしかったのですが、やはり最も深く印象に残ったのは、ポスターにあるような風俗画で描かれる人物たちです。どうして情景が伝わってくるのかが不思議でしたが、おそらく人物の「形」ではなく、人物が発する「氣」を描いているからなのでしょう。

藤平光一先生は日本画を描きました。展覧会で入賞することもありました。あるとき、心身統一合氣道の教本を出版することになり、技の写真を撮影するにあたって、どのタイミングで撮影するか分かるように簡単な絵を描きました。不思議なことに、その絵に人物の動きが感じられるのです。

当時は良く分かりませんでしたが、おそらく「氣」の動きを表現していたのでしょう。絵が入ったその直筆原稿、今は行方が分かりません。貴重な資料になったでしょうに…、勿体ないことです。

この展覧会は11月10日(日)までサントリー美術館で開催されています。

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