東京の上野にある東京藝術大学大学美術館で開催中の「大吉原展」に行って来ました。
江戸の吉原は、約250年続いた幕府公認の遊廓でした。遊廓は、前借金の返済にしばられ自由意志でやめることのできない遊女たちの犠牲の上に成り立っていた、現在では許されない、二度とこの世に出現してはならない制度です。
このような注意書きで始まるこの美術展、国内外から吉原に関する美術作品が集められ、江戸時代の吉原の美術と文化を再考する機会として開催されています。会期の終わりが近いことから、平日にもかかわらず混み合っていて入場規制がかかっていました。
私は吉原についてほとんど知識がありませんでしたが、その文化の奥行き、美術の拡がりにたいへん驚きました。美術展として、そうした華やかな部分だけに着目するのではなく、遊郭という陰惨な現実にも触れられていたのが印象的でした。
絵画や錦絵も見事でしたが、「江戸風俗人形」という作品が圧巻でした。浮世絵や版本に描かれた1804~1830年頃の吉原の大見世の情景を、人形師・檜細工師・江戸小物細工師によって5年間かけて立体的に創られた作品です。
2階建ての各室には精巧に作られた極小の家具・調度品・四季折々の花などが配置され、作品を一周すると妓楼の日常が感じられます。人形は細部まで魂が込められていて個性を感じました。
この美術展は5/19(日)まで開催されています。