生誕1200年 歌仙 在原業平と伊勢物語

三井記念美術館(東京・日本橋)で開催中の特別展「在原業平」を鑑賞しました。

実は先月、京都の「なりひら寺」こと十輪寺を訪ねたばかりでした。業平が晩年に塩焼きを楽しんだとされる塩竈跡を眺めて思いを馳せたことで、鑑賞がより深いものになりました。

生誕1200年を記念したこの展覧会では、業平をモデルとした『伊勢物語』にまつわる絵画や工芸品が並び、その優美な世界が時代を越えて愛されてきた軌跡に触れることができます。

会場でふと足を止めさせられたのは、『小倉百人一首』で有名なあの一首。

「千早ぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」

この歌の出会いは、幼い頃に父から教わった落語の『千早振る』でした。

知ったかぶりの隠居が、「千早という娘に振られた力士の竜田川が豆腐屋になり、『おから(から)』を『くれない(くれない)』と言って彼女を突き飛ばした……」と語る、あの奇想天外な嘘。それが記憶に残ったようで、しばらくの間、竜田川とは不器用なお相撲さんのことだと思い込んでいました。

実際の歌が描くのは、竜田川の川面が紅葉で真っ赤に染まり、水を括り染めにしたかのような鮮烈な情景です。そこには、かつて想いを寄せながらも結ばれなかった高貴な女性への、今なお色褪せない想いが込められたものとのこと。何だか胸に迫るものがありました。

日本独自の芸術である「かるた」の数々にも心惹かれました。小さな札の中に書と絵画が調和する美しさは、まさに手のひらサイズの小宇宙。また、江戸時代のデザインブックといえる「雛形本」の面白さも格別でした。当時の最先端のファッションであったのでしょう。

1200年を経てもなお、人々の想像力を呼び起こす業平の世界。私の頭にあった「おから」の記憶も、ようやく竜田川を流れる鮮やかな紅葉の色に塗り替えられました。

この展覧会は4/5(日)まで三井記念美術館で開催されています。

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