なぜ今、危機管理なのか

「自分だけは大丈夫」という思い込みは、日常の様々な場面で生じています。

車道で赤信号になるのに、加速して交差点に進入する自動車を見かけます。他方で、信号が変わる瞬間に、横断歩道を慌てて渡ろうとする歩行者も見かけます。

スマホを見ながら自動車や自転車を運転している人がいます。他方で、横断歩道の信号待ちで、車道のギリギリに立ってスマホを見ている歩行者もいます。

その瞬間は幸いにして事故にならなかったとしても、いざ危機が生じたときに、その状態では全く対応することができません。

「自分は事故を起こさない」「自分は事故には遭わない」という考えが、無意識のうちに、事故という現実から目を背けさせているのでしょう。


元旦の記事でお知らせした通り、2月11日(火)建国記念の日に「Kiフォーラム2025」というイベントを開催いたします。メインテーマは「危機管理を考える」です。

なぜ今、危機管理なのか。

危機管理とは、不測の災害・事故・事件等に対処する政策や体制のことで、人命救助や被害の拡大防止など、迅速に有効な措置を取るためのものです。そこから、国や自治体、企業等の取り組みと捉えている人もいるでしょう。

しかし、昨年から問題になっている闇バイトによる犯罪に見られるように、危機管理はもはや「他人事」ではなく、「自分事」の時代です。

施錠の徹底やセキュリティの強化など、テクニカルな対処も大事ですが、最も重要なことは、危機管理の考え方を学ぶことだと私は考えています。

しかし、通常は危機管理を学ぶ機会がありません。ひとたび考え方の基本が身につけば、個人・家庭・学校・企業・地域社会、あらゆる環境で応用ができます。

まさに、心身統一合氣道の稽古における「土台づくり」と同じことです。


今回、ゲストスピーカーに、元・警視総監の米村敏朗さんをお招きします。

米村さんは警視総監の他にも、内閣危機管理監として国の危機管理を担い、東京2020オリンピックでチーフ・セキュリティ・オフィサーも務めました。そのご経験に基づいて、米村さんの考える危機管理をお話しいただきます。

米村さんは、「危機管理において人間を理解することが大事」と言われます。

人間は、「自分が望まないこと」を無意識のうちに避けようとしています。事件も災害も、私たちにとって決して起こっては欲しくないものです。ゆえに、自覚なく「見ない(見えない)状態」にしてしまうのでしょう。

実際に不測の事態が生じたときも「そんなことが起こるはずがない」と、正常の範囲内だと思い込むことで、心の平静を保とうとします。これは、大災害などで生じる「正常性バイアス」として知られています。

「いざというとき、どうすべきか」を頭で理解するだけでは机上の空論。危機が生じたときに動くことができるようにしておくことが大事であり、そのためには何が必要か、米村さんは具体的に説いていらっしゃいます。


内弟子時代に、外国で私が藤平光一先生のお供をしたときの話です。

宿泊するホテルで、避難経路を確認するのは、お供である私の役割でした。避難経路が複数あるかどうか、目を閉じた状態でも移動できるようになど、現場で入念に確認するように、具体的に指示されていました。

最初は「そこまで必要だろうか?」と感じましたが、後から分かったことは、火災が生じたときに視界がない状態でも避難できるための用心でした。実際に確認してみると、物が置かれて非常口が使えないホテルもありました。

藤平光一先生は、こういった用心を戦地での体験から身につけたようですが、私には「氣」を身につけるための訓練の一環でさせていたようです。なぜなら、氣が出ているから危険を察知し、氣が隅々に通っているから備えをできるからです。

Kiフォーラム2025」では、米村さんのご経験に基づく貴重なお話を引き出しながら、参加者の皆さんと一緒に危機管理における氣の活用を考えます。

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