なぞらない

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藤平信一です。

先日、ご縁があって市川染五郎さんの歌舞伎を鑑賞しました。

一日で3つの異なる演目を三週間近く行っているわけですから、体力・精神力という土台がなければ出来ないことです。その鍛え方に感銘を受けました。

「毎日同じことをしていて飽きることがないのだろうか」という人がいましたが、そんなことはあり得ません。

私の仕事でも同じことが言えるのですが、仮に同じ内容の繰り返しだとしても、相手は毎回異なるわけで、一度として同じ現場はないからです。また、同じことを繰り返すかたこそ質も向上して行きます。

昨日より今日、今日より明日と日々進歩しているのです。したがって、元々飽きっぽい私も飽きることは全くありません。

心の使い方の一つに「なぞる」というものがあります。

それは稽古においてもよく見かけます。同じ技を繰り返し稽古するとき、前の感覚を引きずってしまうのです。すると、心の使い方が曖昧になり上手く行かなくなります。

日常生活でいえば、慣れで物事を行うときがそうでしょう。車を運転するとき、安全確認は毎回しなければいけません。状況は常に変化しているのですから当たり前のことです。しかし、そこに慣れが出てくると、なぞるようになって来るのです。

仕事でいえば、定期的に行っている仕事、過去に上手くいった仕事などは、なぞりやすいものです。毎回、状況は変化しているはずですが、過去の経験によってなぞってしまうのです。特に成功体験は要注意です。

通常、この「なぞる」という心の使い方は無意識でしています。そのため自覚はほとんどありません。これを防ぐには「毎回初めて」という前提で物事を行うことです。

心身統一合氣道会では、新しい年の始めに「洗心の行」を行います。これは寒中で水をかぶる行です。氷点下は当たり前、最も寒い年でマイナス10度まで氣温が下がります。未経験の方は皆さん「とても出来るとは思えない」と言います。

洗心の行には二つ目的があります。

一つは心を決めることです。一見して困難に思えることも、楽に出来ることを会得することです。何事を行うにも心を決めることが重要と身体で理解するのです。やせ我慢で行うと風邪を引きます。

もう一つは、昨年あった良いことも悪いことも総て水に流すことです。これによって、新たな氣持ちで一年を迎えることが出来ます。

新年は1月8日()に栃木にある本部宿泊研修施設で洗心の行を行います。心身統一合氣道会の指導員・会員の皆さまには是非参加されませんか。参加にあたっては所属する道場・教室の責任者の許可が必要です。

私は7才から洗心の行を続けています。そのお陰で「なぞる」ことなく、毎年、一歩ずつ前に歩んでいます。

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