藤平信一です。
私の本業は心身統一合氣道の指導・普及と指導者の育成です。一年を通じて最も多くの時間を使います。
さらに、心身統一合氣道を世の中に広く知って頂くため、本を書き、取材を受け、外部の講演・講習で「氣」の指導をしています。
ロサンゼルス・ドジャースやサンディエゴ・パドレスのように、合氣道と完全に異なる分野で指導しているのも、その一環です。スポーツだけではなく、その分野は多岐に渡っています。
勿論、自分自身の勉強や訓練の時間も確保しなければいけないので、総てを全うするには、当然のことながら時間が足りません。
つまり、私にとって時間の使い方が最大の課題です。
実際のところ、稽古以外で自分自身の勉強や訓練の時間を別に設けるのはなかなか難しいので、「見るもの・触れるもの」総てが訓練、と自分の中でおいています。
例えば、仕事において、こちらの用件で先方に電話するとします。
伝える内容によって、始めに「何分で話をするか」目標を決めておきます。また、電話する相手には最初に「~分頂けますか」とお伝えしています。
これをすることによって、二つのことが得られます。
第一に、目標の時間を決め、その中で相手が理解出来るように伝えるには、事前に自分のなかで話の内容が整理されていなければいけません。
また、相手がどの程度状況を把握しているかによって必要な時間は変わります。したがって、相手のことも理解しておく必要があります。
決まった時間内に収まらないときは、自分の伝え方に不足があったのか、あるいは、目標そのものに無理があったのかもしれません。何にしても、次に目標を立てる際にフィードバックします。
このトライ&エラーを繰り返すことによって、相手のことをよくみる様になり、「分かりやすく伝える」訓練になるのです。
第二に、「時間」の感覚が身につきます。
「3分間で伝える」という目標を立てて、実際に3分で収まるようにすると、いちいち時計を見なくても3分という長さが身体で分かるようになります。
この時間の感覚は指導の現場でも活きて来ます。3分を過ぎると体感で分かるので、自分の話が長くなっていることに氣づき、そこから立て直すことも出来るようになります。
この3分は状況によって変わるものであり、また研究の余地もあります。
私はいま基本を「2分」に定めています。時間がかかっても「3分」です。また、対面で話をする際は「1分」を基本にして伝わるように心がけています。
本来、こちらの用件で話しかけているので「相手の時間を頂いている」わけです。湯水のように時間をかけて良いはずがありません。
自分の中で話の内容が全く整理されていない状態で話しかけてしまうと、相手は、話の内容を理解するために余分な時間をかけることになります。
厳しい表現をすれば「相手の時間を盗んでいる」ことになります。
勿論、時間を氣にしながらでは出来ない重要な話もあります。そういう場合は、反対に、時間の制約を完全に取り払うことが大事です。
また、相手の用件をお聞きする場合は、こちらで目標は立てられないので、誤解がありませんように…。
たかが電話、されど電話。
目的を持って行えば、電話をかけること一つでも重要な訓練になります。私たちは何千回、何万回と電話をかけているわけですが、目的なくただ行っていたら、そこから得るものはほとんどありません。
歩くこと、登ること、持つこと、運ぶこと、伝えること、など、日常生活のあらゆる動作や行為が訓練になるのです。このように、私はあらゆることで訓練しています。
すると、限られた時間であっても有効に訓練することが出来ます。この原稿を書いている今も、まさに訓練の最中なのです。