小さな滞りが大きな滞りを生む

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藤平信一です。

内弟子時代、掃除に明け暮れたことが習慣になったようで、私は今でもよく掃除をします。

ホコリというものは面白いもので、小まめに掃除しているとひどくは汚れません。計画的に掃除していれば、大掃除をする必要もありません。

しかし、大した汚れではないと少しのホコリを放置してしまうと、それがさらに他の汚れを吸着し、みるみるうちに汚れていきます。

汚れきってしまった状態から掃除するのは、氣力と体力を必要とします。ポイントは、ちょっとの汚れのときに掃除をすることです。

実はこれ、「氣」の滞りにおいても同じことが言えます。始めにちょっとした「氣」の滞りが生じ、それを放置することで、その後の出来事に繋がって、大きな滞りになっていくのです。
以前にこんなことがありました。

日々、仕事をしているうちに、だんだんやる氣がなくなって来て、完全に氣が滞ってしまった人がいました。いよいよどうしようもなくなって私に相談したようです。

本人に原因を尋ねても、思い当たることが全くないようです。2ヶ月くらい前から調子を落としているとのこと。その頃にどんなことがあったか、詳細に思い出して頂くことにしました。しばらく時間をかけて、本人が「あっ!」と思い出しました。

信頼する後輩が自分の悪口を言っていると、ひとづてに聞き、事実か確認することも出来ずに数日間、悶々としていた時期があったそうです。その後、仕事が忙しくなって、そのことを忘れていたのでした。

話をよく聞くうちに、私はこの出来事こそ現在の不調のきっかけではないかと感じました。最初はちょっとした氣の滞りでも、その状態のまま先に進むと、そこでも新たな氣の滞りを生じさせるからです。

それはちょうど、わずかなホコリが他のホコリを吸着していき、加速度的に汚れていくのに良く似ています。大切なのは、ちょっとしたホコリのうちに取り除くことです。

私がこう指摘すると、この方はすぐに後輩と話をする機会を設け、行き違いによる誤解であることが判明しました。そして、たったこれだけのことで不調から立ち直ったのでした。

仮に、悪口が「誤解」ではなく「事実」であったとしても、相手に直接確認さえ出来れば、相手の真意を知ることで、氣の滞りが解消するのは良くあることです。

しかし、これは決して簡単なことではありません。理由は二つあります。一つは、氣が滞っているとき、滞っている自覚がないこと。もう一つは、氣の滞りの原因の大半は、実は小さなことだからです。

はじめはちょっとした出来事がきっかけで、しかもそれを忘れてしまうので、原因不明の不調に陥りやすいのです。これをどう解決するかは、私たちの人生にとっての大きなテーマで、私自身も日々取り組んでいます。

考えてみれば、世の中の「滞り」には、必ず元となっているものがあります。高速道路の自然渋滞も、始めは一台の車のブレーキから始まります。その滞りが次の車のブレーキに繋がり、渋滞になっていきます。

3月21日(水)春分の日に開催する「Kiフォーラム2018」では、
世の中の「滞り」を研究なさっている
東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授をお迎えしてトークセッションいたします。
定員となりましたので、現在は「キャンセル待ち」のみ承っています(3/10現在)。

西成先生はいま熱心に心身統一合氣道を稽古なさっています。西成先生と私のWeb特別対談も公開されていますので、ぜひこちらもご覧下さい。

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