あるがまま、ありのまま

東京では桜は満開の時期を過ぎ、桜の花びらが、ひらひらと軽やかに舞っています。はかなさと共に美しさを感じるのは、今の姿に留まろうとする執着なく、あるがままに咲き、あるがままに散る姿にあるのかもしれません。そこには「良く見せよう」という気負いもありません。

より良くありたいと願い、自分を磨くことは大切なことです。しかし、私たちの日常に目を向けると、人間関係において「自分を良く見せよう」という気負いを抱えてしまうものです。

「自分では駄目では」という不信や、「自分には足りない」という不安から、実体のない理想の像に無理に成り代わろうと執着するとき、不自然な力みが生じます。自分以上の「別の何か」になろうと背伸びをした瞬間、私たちの心と体は強張ってしまうのです。

この強張りをほどくためには、日常のふとした瞬間に「臍下の一点に心を静める」ことです。

上ずった状態が解消されると、波が静まった湖面に月の姿が映し出されるように、ありのままの自分の状態を正しく知ることができます。「自分以上の何者かに見せよう」とする背伸びにも、気づくかもしれません。その気づきこそが、不自然な力みから解放してくれます。

特に「周囲からの期待に応えよう」と考えるときは要注意です。

一人ひとりが寄せる期待は異なり、そのすべてに応えることなど不可能です。「期待」は他人が勝手に抱く外側のもので、「役割」は自分が自覚する内側のものです。期待という曖昧なものに振り回されず、自分の役割を正しく知り、なすべきことに全力を尽くすだけです。

これは文章を書く上でも同じです。「良い文章を書こう」という作為的な状態に陥った瞬間、自然な流れは滞り、言葉の持つ生きた響きが失われます。このたび上梓する新刊『力を抜く練習』でも、筆が止まるたびに強張りを感じ、臍下の一点に心を静めることに立ち返りました。

そうして、ありのままに記した本が出来ました。

「良く見せよう」とする強張りを解いてありのままの自分に立ち返るとき、知らず知らずのうちに背負っていた重荷を下ろして、人間が本来持っている力が発揮されます。今回の本の出版は、まさに執筆を通じた自分自身での実践でもありました。

季節が巡るこの時期に、本書をぜひ手に取っていただきたいと思います。

2026年4月22日(水)発売:
力を抜く練習 動じない自分の養い方』 藤平信一(著) 幻冬舎

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