心をどこに向けるか

「第44回全日本心身統一合氣道競技大会」を開催しました。競技大会を開催する目的は、心身統一合氣道の体技を通じて、心身統一の深さを競い合って向上することにあります。

結果として順位が決まり、入賞者には表彰をするのですが、最も重要なことは、出場選手一人一人が大事な場面に臨み、持っている力を最大限に発揮することにあります。

本番で思い通りに動ける選手も、動けないも選手います。どちらも大事な経験です。

競技大会の出場は「通過点」であり、「終着点」ではありません。「入賞した」「入賞できなかった」で終わったら勿体ない。チャレンジによって得たものは必ず次に活きます。

うまくいったのならば、何が(なぜ)良かったのか。そうでなかったならば、何が(なぜ)良くなかったのか。心と身体の状態、取り組み方を振り返ることが大事です。


振り返る上で最も重要なのは「心をどこに向けるか」です。

いま自分が取り組んでいることに心を向けるのが自然ですが、実際には、向けるべきでないこと、向ける必要のないことに向けることが多い。

例えば「失敗したらどうしよう」がそうです。このとき、心は失敗に向いているので、目の前のことに向かずに散漫になり、集中できなくなるのです。

特に、準備不足があると、不足を補うことに心を向けてしまいます。競技大会であれば無意識で動けるまで練りこんでおくと、心は目の前のことに向けて集中できるのです。

これは仕事でも同じこと。前もって入念に段取りをしておくことで、本番では目の前のことに100%心を使えます。不測の事態が生じても臨機応変に対応することができます。

「どこに心を向けるか」を自覚し、心の向け方に取り組むと、持っている力を発揮できるようになります。避難訓練に似ていて、日頃から訓練しておくと本番でも同じようにできます。


心の向け方は、病気や怪我の回復にも繋がっています。

病気や怪我をすれば、誰でも不安やストレスが生じます。痛みなどの不調に加えて、「本当に良くなるのだろうか」「悪くなったらどうしよう」という不安に心がとらわれてしまいます。

人間の身体の機能において強い不安やストレスが生じると、その状態を解消するためにエネルギーを消費し、エネルギーが回復のために使われなくなって、その分、回復が遅くなります。

具体的な対処法の一つが「氣の呼吸法」です。不安やストレスを感じたら無理に抑えてはいけません。そのままの状態で、時間の許す限り、気を楽に呼吸を静めることを続けるだけです。

呼吸が静まると不安やストレスは軽減し、心が穏やかになります。すると、心は本来向けるべき回復に向くので、回復にエネルギーが使われ始めて回復が早くなります。

家族など大事な人が不調になると周囲は心配します。すると、「大丈夫?」と声をかけたくなるわけですが、過度にそれをすると、相手はますます不安な状態に陥ります。むしろ「大丈夫!」と声をかけて安心させることも必要なのです。


「心をどこに向けるか」、実に奥の深いテーマです。

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