六本木クロッシング展

六本木ヒルズでの仕事の合間に、森美術館で開催されている「六本木クロッシング展」を鑑賞しました。3年に一度、森美術館が開催する現代アート展から日本をみる展覧会です。

日頃、現代アートにはあまり縁がありませんが、それでもこの展覧会に興味を引かれました。

「和田礼治郎氏《MITTAG》」では、ガラスの中に注がれたブランデー越しに高層階から東京の景色を見ます。ブランデーという液体のフィルターを通すことで、見慣れた東京の景色が非日常的な質感に変わり、琥珀色の揺らぎは大都市の喧騒がどこか遠い記憶のようになります。作品の前にあるソファーに座り、時間を忘れて見入っていました。

「A.A.Murakami 《水中の月》」では、次々と生まれてくる光の泡が、風によって運ばれ、最後は霧のように消えていきます。その移りゆく様が、何とも言えないはかない情感を呼び起こします。この作品はAIによって制御されているようで、テクノロジーが単なる効率化の道具ではなく、芸術的な余韻を生むために存在しうることを感じさせます。

もっとも印象に残ったのが、「荒木悠《聴取者》」です。牡蠣の殻をデジタル撮影し3Dデータ化し、空間に投影され、殻の表面をあらゆる角度から見る映像になっています。まるで宇宙船で惑星探査をしているかのような奇妙な雄大さを感じます。

「牡蠣のように口が固い」という慣用句がありますが、殻の硬さと開けにくさから寡黙の象徴とされる牡蠣が、沈黙についての洞察を、短くシンプルな表現で語りかけてきます。次第に牡蠣が愛らしく見えてくると同時に、一緒に考えている自分がいました。

微小なものを巨大なスケールで捉えるという視点、そして「沈黙」をテーマにした牡蠣との対話。物理的な殻の硬さと、内面の繊細な思考を結びつける体験は現代アートならではなのでしょう。私にとって、現代アートのイメージが大きく変わる作品でした。

この展覧会は森美術館(東京・六本木)で3/29(日)まで開催されています。

タイトルとURLをコピーしました