
「技がうまくできないのですが、何がいけないのでしょうか」
心身統一合氣道の稽古で、生徒さんからよくされる質問です。
初心者の場合は技の形や動きが違っていることが多いですが、そうでなければ、たいていは土台が乱れることで生じています。自分の姿勢が乱れていては、相手を導き投げることはできません。したがって、土台づくりが最も重要なのです。
土台があることが技の基本ですが、稽古を重ねていくうちに、いつのまにか基本が疎かになっていきます。そんなときは基本に戻り、土台を確認することで解決できます。基本動作である「入身動作」「転換動作」もそのためにあります。
「いつもと変わらないはずなのに、なぜか調子が良くない」
誰でもそのように感じるときがありますね。
行き違いが生じてこちらの意図が相手に正しく伝わらない。普段なら気がつくことなのに気がつかない。大きな体調不良ではないけれども、どこか具合が悪い。
このようなときは、「特別なことをする」のではなく「基本に戻る」ことが大事です。
日常生活における基本とは何かといえば、「当たり前のこと」です。当たり前のことを当たり前に行うことで、調子が戻っていくのです。
例えば「挨拶」があります。形だけの挨拶になると相手の顔を見ず、発する氣をみていません。発する氣をみるから、相手の状態を理解することができます。
「確認」もそうです。ひとたび「分かった」と思い込むと、疑問や違和感を持てなくなります。確認することで、相手の意図を正しく理解することができます。
「呼吸」もそうです。呼吸が浅くなると、疲れやすく、プレッシャーに弱くなります。深い呼吸になることで、疲れにくく、いざというときに強くなります。
「挨拶」「確認」「呼吸」、いずれも当たり前のことですが、いつの間にか疎かになって、自覚ないうちに「なぜか調子が悪い」という状態に陥るのです。
コミュニケーションにおいて不調に陥るときがあります。
普段であれば正しく伝わることが伝わらない。理解できることが理解できない。許容できることが許容できない。この状態になると、悪循環の始まりです。
そんなときに戻る基本は、「相手の立場に立つ」ことです。自分の言いたいことが先になっているときは、相手を理解できません。それでは相手とぶつかってしまうだけです。
相手の立場に立つとは、相手の立場を頭で考えることではなく、相手を知る具体的な努力をすることです。相手のことをよく知らないから、相手の立場に立てないのです。
相手がなぜその言葉を発するのか、なぜその行動を取るのか、どんな環境にあるのかを知る努力こそ「相手の立場に立つ」ことです。この基本に戻ることで不調は解消されていきます。
「基本」というものは、戻るためにあるのです。

