
心身統一合氣道のご縁の深い方には、90代の方も多くいらっしゃいます。
野球の広岡達朗さんは93歳。ホリプロ創業者の堀威夫さんは92歳。看護師の川嶋みどりさんは94歳。90歳を過ぎても実にお元気です。
そういった皆さんに共通しているのは、自分のことは出来る限り自分でするようにしていて、あえて不便な手段を選ばれていることです。
周囲にいる者は思わずサポートしたくなりますが、楽をすることによって身体機能が弱くなるのをご存知なのでしょう。勿論、それは「無理をする」ということは全く異なる話です。
世の中のあらゆるサービスは便利になる方向に進んでいます。それ自体は決して悪いことではありません。しかし、心も身体も使わなければどんどん弱くなってしまいます。
うっかりすると、駅などで無意識のうちに階段ではなくエスカレーターを選んでいるので、日々の生活において意識して不便と向き合うようにしています。
先週まで海外講習の指導で、アメリカのサウスカロライナ州に行って来ました。グリーンビルという美しい街にあるファーマン大学が会場で、今回で3回目の訪問です。
日本から飛行機を乗り継いで、片道で20時間くらいかかります。
海外に行くと、日常の当たり前が一変します。レストランで料理を注文することも、スーパーで買い物をすることも、言葉や文化の壁によって急に不便になるのです。
この不便こそ脳にとって大きな刺激になり活性化を促されます。慣れた環境にいると生活はスムーズに流れていきますが、それは同時に脳を使わないでも済む環境でもあるわけです。
英語で指導するのですが、私はネイティブレベルではないので、油断すると相手の言葉がすぐ分からなくなります。そのため、全身全霊で相手が発する「氣」をよくみています。
4日間の講習で、脳は常にフル回転をしているようで劇的に変化し、初日には話している内容をあまり理解できなかった相手も、最終日にはきちんと理解できるようになっています。
これは本当に面白い現象だと感じています。
科学的にも、不慣れな環境に身を置くことが脳の可塑性を高めると言われていますが、実際に言語・視覚・判断力・記憶、あらゆる機能が活性化される感じがあります。
「不便」は確かに不快ですが、成長のチャンスでもあります。慣れない状況で感じる戸惑いや緊張感はストレスがあっても、乗り越えたときの達成感は何にも代えがたいものがあります。
日本にいると「なんて便利なのだろう」と思うわけですが、同時に、自分から不便な環境に身を置く大切さも感じています。不便と楽しんで向かい合うことなのでしょう。
今日も猛暑、いろいろ不便があっても楽しみたいと思います。