
5月下旬に、神奈川県にある湯河原の山を散策する機会がありました。初夏を迎えてもウグイスの「ホーホケキョ」と見事な鳴き声がします。何ともいえない豊かな気持ちになりました。
「春告鳥」とも言われるウグイス、実は夏頃まで聞くことができます。繁殖期になってオスが自分の縄張りにメスを呼ぶための鳴き声で、時期を終えて秋冬になると、「チャッチャッ」という声に変わります。
立ち止まり鳴き声に耳を傾けてみると、「ホー…ホ…ケ?」といった、ぎこちなく、何とも頼りない鳴き方をしているウグイスもいます。どうやらウグイスの鳴き方には個体差があり、熟練度があるようです。
気になって調べると、ウグイスの美しい鳴き声は生まれつきではなく、何度も発声練習を重ねることによって身につけるようです。
確かに人間も「上手に話そう」とすると力んで上ずった声になります。余分な力を抜き、全身を一つに発するから出る美しい声なのでしょう。
身につけるには地道な訓練が必須なのはウグイスも変わらないようで、上手く鳴けないウグイスを見かけると、温かく見守りたい気持ちになりました。
「呼吸」の質が「発声」の質を決定づけます。
声を発するということは息を吐くことであり、深い呼吸になることで、落ち着いていて相手に伝わりやすい声になります。浅い呼吸になると相手にザワザワした感覚を与えてしまいます。
呼吸は心の状態の表れです。怒っている時、過度に緊張する時、動揺している時、悩んでいる時など、心の状態が乱れると呼吸の状態も乱れます。
感情的に話をすると、呼吸の荒さが発声の荒さに表れることによって相手に無意識の抵抗や拒絶が生じて、こちらの意図が正しく伝わらなくなってしまうのです。
大事な話をするときほど心を静めることが大事。呼吸が静まることで発する声も変わって、相手に伝わりやすくなります。
氣の呼吸法の講習の参加者から、興味深い話を聴きました。
この方はスクールの講師で、生徒さんに話をする機会が多くあります。接する態度や言葉遣いを丁寧にしているなのに、「生徒さんから反発され、衝突してしまうことが頻繁に生じてしまう」という悩みを持っていました。
講習で私が「呼吸と発声」について触れた際に、「もしかすると声に原因があるのでは」と思いが至ったようです。自分の声で相手をイライラさせたり、ザワザワさせたりしていないか。
さっそく呼吸を静めることに取り組んでみたところ、生徒の反応が明らかに変わり、衝突することが少なくなったそうです。さらに家族との関係まで良くなったとのことでした。
声が変わると関係が変わる。そんな事例は枚挙に暇がありません。氣の呼吸法は、呼吸を静める具体的な方法で、健康面だけではなく、コミュニケーションにおいても重要なのです。
私も日々、呼吸を通じて発声を磨き続けています。