技の稽古において、相手が自分に攻撃してくるとき、相手の身体をみていると、反応が遅れて相手を投げることができません。「形あるもの」にフォーカスしているとうまくいかないということです。
相手の「身体」が動く前に、必ず相手の「心」が先に動いています。その心の動きが氣配となって伝わるのです。その瞬間に動けば、反応が遅れることはなく相手を投げることができます。
問題は、自分の心が乱れていると、相手が発する氣をみられないことです。特に、「相手を投げたい」という心が働くと、全く分からなくなるのです。
したがって、稽古においては「心を静める」ことがとても重要です。そのために、技を学ぶと同時に「姿勢」や「呼吸」を学ぶのです。
ビジネスに限らず第一線で活躍する人は、言葉にこそなっていませんが、それまでの経験で「氣」をみることを会得しています。
実際、多くのビジネスリーダーが心身統一合氣道の稽古に通っています。
現在では、多くの一部上場企業の幹部研修でも、氣を学ぶ研修が導入されています。氣という「形のないもの」に関心を持ち始めているのです。
日本は物質的には豊かになり、「商品を生産する」「サービスを提供する」というだけでは、企業は生き残れない時代になりました。
幸福感や充足感といった「形のないもの」にフォーカスできる人材、それを作り出せる人材が現場では求められているようです。これから10年、20年で益々この傾向は加速されていくことでしょう。
また、海外でのビジネスに目を向けるならば、言葉・文化・宗教の異なる人々とコミュニケーションを取るには「氣」が不可欠です。
それでは、どうしたら形のない氣をみることが出来るのでしょうか。
相手の発する氣をみるには、まず自分の心が静まっていることが必要です。心が乱れているときは、相手の発する氣をみることはできません。
特に、自分が伝えたいことで頭がいっぱいになっているときは、相手のことを全く理解できません。これは技の稽古と完全に同じことです。
コミュニケーションは「双方向」であり、自分が伝えたことに相手がどの様に反応しているかみることが重要です。臍下の一点に心が静まっているとき、相手が発している氣をよくみることができます。
相手が始めからネガティブな雰囲氣を発しているときは、それは「受け入れる態勢にない」という氣なのです。
相手に伝えた後にネガティブな氣を発しているときは、「良く分からない」「納得がいかない」という氣といえます。相手がこちらの意図を正しく受け取ったか確認する必要があります。
ビジネスリーダーには高いコミュケーション能力が求められます。それには氣という「形のないもの」にフォーカスすることなのです。