息心の行

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今回は先日発売された新著『心と体が自在に使える「気の呼吸」』で、ページ数の関係から割愛したテーマです。

心身統一合氣道の稽古の一つに、50年近く継続している「息心の行(そくしんのぎょう)」というものがあります。

取っ手の付いた鈴を振りながら、ひと呼吸で息を吐き続ける荒行です。鈴を振りながら、「とほかみえみため」という音で発声します。

始めは「」「」「」「」「」「」「」「」という8音、続いて「」「」「み」「み」「め」という5音、最後に「ほかみ」「みため」という2音に変化していきます。

2音になってから1時間程度、鈴を振りながら息を吐き続けます。一日かけて、これを繰り返すこともあります。

私は6歳のときからこの行を続けていますが、最初は本当に辛く、コツを掴んでからは、年々、楽になっていきました。

息心の行では、特に大事なことが二つあります。

一つは、全身に力みなく行うこと。

大きな声を出そうとすると、身体に力みが生じて吐けなくなり、数分もしないうちに苦しくなってしまいます。

「声を発する」ということは「息を吐く」ことであり、全身の力を抜き、全身を一つに用いて息を吐くことによって、ひと呼吸で吐けます。

始めは力みなくできていても、継続するうちに徐々に力が入り、後半になると乱れてしまうことも少なくありません。最初から最後まで、同じように続けられるのが理想の状態です。

もう一つは、全身全霊で行うこと。

息は出せば、自然に入ってくるものです。

長い時間行うからといって、ペース配分を考えて息の出し惜しみをすると、息が十分に入ってこなくなり、すぐに苦しくなってしまうのです。

全身全霊で息を吐いた次の瞬間には自然に息を吸うことができて、ずっと続けることができます。

「出し惜しみをしない」ことを体得するには、最高の機会なのです。

息心の行を学ぶには、まずは氣の呼吸法を実践する必要があります。

氣の呼吸法で、全身に力みがない状態で吐けるようになることで、吐く息が最後に自然に静まるようになります。すると、ひと息で吐いても、最後に一瞬で静まるようになります。

これが身につくと、発声、例えば号令や気合いが変わってきます。声を発した瞬間に音が拡がり、最後が静まっていくようになります。すると、遠くにいる人にもクリアに伝わる声になっていくのです。

さらに、身体の負担が少なくなります。私は一日に長時間講演するときがあり、声を発し続けるわけですが、幸いなことに、この訓練のお陰で喉が潰れることがありません。

ひと呼吸で吐くことは、パフォーマンスにも直結しています。

動作と呼吸が自然に一致するとき、私たちは力を発揮することができます。基本的に、私たちは動く瞬間は自然に息を吐いています。

ゆえに、息を吐くときに力みがあると、動作にも影響を与えてしまい、パフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。

息心の行で力みなくひと呼吸で吐けるようになることが重要で、アスリートや俳優、伝統芸能の皆さんにも、よく体験いただきます。

新型コロナウイルスの感染拡大防止で、現在はなかなか一緒に行えませんが、感染が収束したら、息心の行をぜひ再開したいと思います。

「息を吐く」ことは、本当に奥が深いと思います。

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